難治性アトピー性皮膚炎
(症例報告 平成12年2月13日)
序論:
アトピー性皮膚炎を29歳頃より発症、現在まで、薬物療法・ステロイド療法、漢方薬・S0D食品・食事療法・温泉療法等を試みていた。
今回初めて鍼灸治療をおこなった。治癒はならなかったが有効な結果が得られたので報告する。
・〔症例〕 40歳 男公務員(医療従事者)
・〔症状〕 全身性アトピー性皮膚炎、特に上焦部に著名に見られる。落屑も多い。
・〔初診〕 平成10年9月15日
現病歴:
29歳: 転勤によりストレスがかかりアトピー性皮膚炎が発症。
36歳: 左目、網膜剥麟発症、手術。
現在: 皮膚炎がひどく、落屑・かゆみ、不眠が激しい。いまステロイドは中止し、温泉療法のみ行っている。
一時期は落ち着いていたがリバウンドの為又ひどくなってきた。
所見:
典型的なステロイド顔貌を呈している。胸・背部から上と、上肢に落屑が激しい。
視力、右は0.5、左は0.01以下、舌のカは有るが色は黒茶、豚状は硬、数脈、KT 37.5℃
治療・経過:
来院時、血液像・血球数は、赤血球が461万、白血球13.900、リンパ球13.6%、好酸球3L5%、食作用をもつ白血球及ぴ好中球44.9%であった。
水毒症を主病として、脾虚・気逆症として治療をおこなった。鍼はデイスポ針・1寸・1番針・15分間置針、深さは切皮程度とした。又、発赤・かゆみのところに梅花針をした。
経穴:百会穴、肩ぐう穴、中府、だん中、中かん穴、復留穴、行間穴、天柱穴、肩井穴、大椎穴、心喩穴、肝喩穴、脾喩穴、腎喩穴、委中穴等を使用した。
1週間に1度の治療とした。
・1ヶ月後 10月21日には好酸球:18.7%、リンパ球:18.6%、好中球他:62.7%、R(赤血球):479万、W(白血球):9,300
・2ヶ月後の11月18日には好酸球:13.6%、リンパ球:21.6%、好中球他:64.8%、R(赤血球):478万、W(白血球):9,100
・3ヵ月後の12月17日には好酸球:91%、リンパ球:22.2%、好中球他:68.7%、 R(赤血球)514万、W(白血球)8,200
とデータ上正常に近くなっている。皮膚症状も良好になり、落屑も無くなり、不眠もおさまってきた。しかし、12月末に2度目の網膜剥離になり、又、アトピーによる白内障も発現している。
考察:
鍼治療を1年間行って良好な結果を得たが、灸は皮膚炎のため禁忌症の部類に入ると思われる。しかしこの患者は、体質、性格、職業、家庭的なストレスにより全治は無理だと思われる。